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ISO9001・ISO14001改訂

  • 株式会社 湊屋総研
  • 1 日前
  • 読了時間: 12分

目  次

 1.はじめに

 2.気候変動とその対策

 3.ISO14001の改定内容

 4.ISO9001の改定内容



1.はじめに

ISO9001・ISO14001は、現在、2015年版からの改定作業が行われており、改訂の内容は、現時点(2025年12月)では、正確にはわかりません。本稿では、AIなどを用いて知りえた、ISO規格改訂に関する現時点での最新情報をお伝えしていきます。

 

ISO14001:2026は2026年3月に、ISO 9001:2026が9月に発行される予定です。また2026年版への移行期限は、これまでと同じで、発行から3年程度(2029年)になる見込みです。

 

今回の改定では、気候変動のリスクと機会が中心的テーマとなっていますので、最初に、気候変動対策について述べ、その後に、ISOの改定について、綴っていきます。

 

 

2.気候変動とその対策

気候変動による災害は、大雨・洪水、土砂(土石流)災害、台風の激甚化(高潮・暴風)、熱波、干ばつ、大規模火災、海面上昇、生態系への影響(生物多様性の減少など)など多岐にわたり、その頻度と強度が増しています。

とくに、短時間強雨(ゲリラ豪雨)の増加による河川氾濫や土砂(土石流)災害、台風の強大化による高潮被害、熱波による熱中症や水不足などが顕著で、世界中で甚大な人的・経済的被害を引き起こしています。

これらの気象災害は、その激甚化・頻発化は、地球温暖化による気候変動が主な原因とされています。今回のISO改定では、その気候変動への対策が求められています。

 


2.1 気候変動による災害

気候変動により、次のような災害が発生します。自社に影響のある災害を特定し、そのリスクと機会を抽出して、対策を講じます。


表1 気候変動による災害とその影響


2.2気候変動が地域社会・事業活動に与える影響

気候変動が地域社会と事業活動に与える影響を整理すると次のようになります。経営活動への影響を分析し、リスクと機会を抽出し、リスクと機会に対する対策を講じてください。

 

表2 気候変動が地域社会・事業活動に与える影響



2.3組織の利害関係者を見直す

気候変動が自社にどのような影響を与えるかを考えるとき、関係する「利害関係者(ステークホルダー)」を再確認します。顧客、取引先、従業員、地域社会、行政機関、投資家など、組織に関わるすべての関係者が対象です。

気候変動問題は、他の環境・社会課題とのシナジーを追求しつつ、トレードオフの悪影響の回避と抑制に尽力する重要性は、今後さらに高まっていくと思われます。次のように、利害関係者を整理することで、自社が優先すべき方向性が見えてきます。

 

表3 利害関係者の見直し



2.4 ISO改定で求められる気候変動対策

ISOで求められる気候変動対策は、気候変動のリスクと機会を整理し、自社の事業特性に合わせて「緩和(排出削減)」と「適応(リスク・機会対応)」の両面から対策を立てることになりますます。

「緩和」と「適応」の両面から、品質・環境パフォーマンス向上と事業継続性を高めることを実践していきます。

具体例として、工程改善によるエネルギー・材料節約、製品設計への環境要求追加、サプライチェーンのリスク管理、内部監査での環境視点導入、顧客要求への対応などがありれます。

これらの取り組みは、ISOの「リスク及び機会への取組み」や「モニタリング及び測定」の要求事項と関連付けられます。

 

(1)緩和策(排出量削減・エネルギー効率化)

気候変動の原因となっている地球温暖化を抑えるために、温室効果ガスの排出量を削減し、エネルギー効率を向上させ、気温上昇や気候変動の進行を抑える取り組みです。緩和策には大きく分けて、次の2つの方法があります。

 

①温室効果ガスの削減

 ・再生可能エネルギーの利用

 ・工程改善により 不良品・手直し作業を減らし、原材料やエネルギーの消費、廃棄物を

  削減(例:不良率を下げて年間5%のCO₂排出量削減)を削減する。

 ・エネルギー効率の向上。空調のフィルター清掃、サーキュレーター併用、省エネ機器導

  入による電力削減。

 ・製品・サービス改善を行う。顧客の省エネ・低排出ニーズに応える設計、ソフトウェア

  最適化によるサーバー負荷軽減など。

②二酸化炭素の吸収量拡大

 ・森林の保全・保護・植林による光合成の促進

 ・海洋とくに藻場(もば)による二酸化炭素の吸収量を増やす

 

(2)適応策(リスク対応・事業継続性強化)

予測される影響を評価し、事業継続計画(BCP)を見直し、インフラの強化、新たな技術やビジネスモデルへの転換を指ざす。具体的は次のような対策があります。

 ①リスク特定と監視。自然災害(気象データ分析)、サプライチェーン分断(代替調達

  先の確保)などのリスクを特定し、モニタリングする。

 ②設備・インフラ強化。災害に備え、設備の老朽化点検や耐久性向上を図る。

 ③苦情対応強化。気候変動関連の苦情(製品の品質問題など)に視点を加えて対応する。

 ④災害時の避難計画の策定

 ⑤熱中症対策


 

2.5 気候変動対策をISOシステムに組み込む

ISOの目的は「継続的な改善」にあるので、気候変動対策においても、成果が測定・検証できる仕組みにする必要があります。定期的なモニタリング・評価を行い、効果測定を行うことで、実効性のある対策が実現できます。例えば、以下のような実践が効果的です。

 

 ①電力使用量、CO₂排出量などの省エネルギー活動の目標値を設定し、定期的に監視 

  する。

 ②設備投資や業務改善による削減効果を数値で評価する

 ③サプライチェーンのリスクを特定し、複数経路での物流を行う

 ④気候災害や物流停滞による原材料仕入れへの影響に備えた代替発注先のリスト化

 ⑤負荷低減に関しては、数値目標を設定し、サプライチェーンのリスクに関しては、リス

  クの特定だけでなく対策方法にまで落し込む。

 

目標達成に向けた取り組みの効果や、リスクに備えた対策状況の妥当性などを含め、効果測定・検証を考慮した対策を目指すことが大切です。PDCAサイクルを意識し、ISOシステムに組み込みます。そして、PDCAサイクルを回して継続的改善を図り、手順書で基準を遵守し、目標が立てられない事象については、対応訓練によって基準を守れるように訓練する必要があります。

 

表4 管理サイクルの改良



2.6 気候変動への具体的な対応手順

ISO改正により、組織は「気候変動」をマネジメントシステムにおけるリスク・機会としてとらえ、計画・実行・評価・改善のPDCAサイクルに組み込むことが求められます。ここでは、組織が行うべき具体的な対応手順を次の6つのステップに分けて解説します。


Step1 現状把握

 現状把握では、

  ① 表1から、気候変動が地域社会に与える影響

  ② 表2から、気候変動がビジネスに与える影響

  ③ 表3から、気候変動が利害関係者の要求事項に与える影響

 を抽出して、自社に関連するリスクと機会を整理して、気候変動の現状を把握します。

 

Step2 気候変動対応の目的・範囲を決定する

 次に、気候変動への対応を「品質マネジメントシステムのどの範囲で扱うか」「何のため

 にその対応を行うのか」を明確にします。

 具体的には、対象とする事業領域、製品、サービス、拠点などを定義し、目的を設定しま

 す。ここでの基本的方向性は、気候変動対策にいて環境・社会課題とのシナジーを追求し

 つつ、トレードオフの悪影響の回避と抑制に尽力するということです。たとえば、

  ①「製造工程での設備を更新し、CO₂排出量を削減する」

  ②「災害発生時には、サプライチェーンの管理を行うことによって供給体制を維持す 

    る」

 といった形で、具体的かつ測定可能な目標を設定することがポイントです。これによ

 り、組織の方針と整合性を保ちながら、実効性のある対応計画を策定できます。

 

Step3 気候変動による影響・リスクを整理する

 気候変動によって、自社に与えるリスクや機会を洗い出し、どのような影響が想定される

 かを分析します。例えば、集中豪雨の場合は、以下のようなリスク・機会が考えられま

 す。この他に、台風・暴風、気温上昇などは、どこの会社にもあることなので、それらの

 リスク・機会を分析してください。

 

表5 リスクと機会の整理(集中豪雨の場合)


Step4 課題の優先順位を決定する

 洗い出したリスク・機会をもとに、重要度と影響度の観点から優先順位をつけます。すべ

 ての課題に一度に対応することは現実的ではないので、影響が大きく、かつ発生可能性の

 高い項目から着手します。

 

Step5 施策を決定・実施する

 優先順位を整理したら、実効性のある施策を迅速に決定し、実行に移すことが求められま

 す。気候変動への対応は一度きりの取り組みではなく、事業活動全体に影響を及ぼす継続

 的な課題であるため、現実的かつ自社の実情に合った対策を検討することが重要です。

 

 具体的には、気候変動による影響を最小限に抑えるための「予防的措置」や、「対応手

 順の整備」「インフラ改善」などを柱として、品質マネジメントシステムの中で運用可

 能な形に落とし込みます。


Step6 定期的に進捗の確認・見直しを行う

 施策の実施後は、定期的にその効果を確認し、必要に応じて見直しを行います。環境や社

 会の変化に応じて継続的に改善していくことが求められます。

 

 内部監査やマネジメントレビューの中で進捗状況を確認し、最新の情報やデータに基づい

 て目標や手順を更新していきます。



3.ISO 14001の改訂内容


3.1 発行スケジュール

ISO 14001:2026は、2026年第1四半期(1月〜3月頃)の正式発行が予定されています。 

 ・2025年12月:最終国際規格案(FDIS)の発行・技術的要求事項の確定

 ・2026年3月 :正式発行予定

 ・2028年〜2029年:新規格への移行期限(発行から通常3年間) 

 

3.2 改訂の目的

今回のISO 14001改定は、次の目的があります。


 ①気候変動、自然破壊、資源の枯渇、利害関係者の監視の強化等の環境問題に対応する。

 ②他のISOマネジメントシステム規格との整合性を完全に維持する。

 

多くの組織にとって、これは既存のEMSプロセスを再構築するのではなく、改良することを意味します。改良とは、単なるマイナーチェンジではなく、リスクと機会において大幅な変更があるということを意味します。

また、気候変動対策については、リスクと機会の特定方法に大幅な変更があるので、統合システムを運用されておられる組織は、2.気候変動とその対策」を確認してからISOシステムの改良に着手された方が良いと思います。


 

3.3 主な改訂ポイント

今回の改訂は、単なるマイナーチェンジではなく、「中程度の修正」とされています。そして、現代の環境課題に即した重要な変更が含まれます。 

 ①気候変動への対応強化:組織の文脈分析(4.1)および利害関係者のニーズ(4.2)に

おいて、気候変動を検討することが明示的に求められる(2024年の追補版内容を継

承)。

 ②生物多様性の考慮:気候変動に加え、生物多様性の保護や資源効率への焦点が強まる。

 ③変更の管理:EMSに関連する変更を計画的に管理するための新箇条が追加される。

 ④用語の整合:他規格(ISO 9001等)との整合性を高めるための用語の近代化。 


表6 ISO14001の改訂内容


3.4 企業が準備すべきこと

新規格への移行に向け、以下の準備が必要です。

 

 ①すでに2024年2月発行の「気候変動に関する追補」への対応は現行規格下でも求めら

  れていますので、未対応の場合は、まず、その確認が必要です。

 ②最新情報の入手:審査機関やコンサルタントのサイトやセミナーで、新規格案の情報を

  確認する。

 ③現状分析の更新:気候変動や生物多様性が自社の環境リスクや機会にどう影響するか、

  改めて検討を開始する。

 ④スリム化・統合:複雑化したマニュアルの整理や、ISO 9001との統合運用を検討し、

  新規格導入時の負荷を軽減する。

 ⑤リーダーシップの責任を明確化

  ・ライフサイクル視点と EMSの登録範囲を見直し、上流および下流の影響が確実に把

   握されるようにする。

  ・新しい条項 6.3 を満たす変更管理統制を確立または正式に定める。

  ・役割の説明、方針、およびコミュニケーション資料を更新する。

 

 

3.5 改訂作業を開始する時期

「DIS版」「FDIS版」「IS版」は、という国際規格の策定プロセスの段階を指す用語があります。 ISOの改定の進展に応じて、「DIS版」「FDIS版」「IS版」が発行されます。

 ・DIS版 (Draft International Standard)は 国際規格原案(草案)。

 ・FDIS版 (Final Draft International Standard)は 最終国際規格原案

 ・IS版 (International Standard) は国際規格。つまり、ISO規格を指します。

いま、改訂はFDIS版まで進んでいると思われます。2015年版のときには、FDIS版が発行された時点で、品質・環境マニュアルを改訂した企業もありました。2015年版ではFDIS版とIS版が大幅に異なるものであったために、IS版が出版されてから、再度、マニュアルを改訂された企業がありました。

そのような経緯がありますので、今回の改訂では、IS版が出版されてから、マニュアルの改訂作業を開始されることをお薦めいたします。




4.ISO9001の改訂

 

4.1 品質文化と倫理的行動

ISO9001の改訂は現在進行中で、2026年9月頃に新規格「ISO9001:2026」として発行される予定です(日本規格は「JIS Q 9001:2026」)。今回の改定は、全面改訂ではありませんが、単なるマイナー改訂以上の修正が必要となる見込みです。主な変更点は次の通りです。

 

 ①「品質文化と倫理的行動」の明確化

  ・企業文化は、組織の構成員が共有する価値観や行動様式の総体です。品質文化は企業

   文化の一部です。

  ・品質文化とは、「品質を大切にする価値観」を共有し、日々の意思決定・行動様式に

   自然と反映される状態を指します。

  ・倫理的行動とは、たとえば、法律や社内規定を守り、不正を行わない。透明性のある    行動(昇進の評価において、客観的かつ公平な基準(業績や能力)を用いる。情報管

   理の徹底(顧客情報や企業秘密を漏洩させない)。ハラスメントの防止(相手の人格

   を尊重し、不快な言動をしない)などを指します。

 ② リスク・機会に関する要求事項の強化(「リスク」と「機会」を分けて記述)

 ③ 顧客満足度調査の多様化(顧客からの苦情、営業担当者やサービスエンジニアからの

   報告など)

 ④ マネジメントレビューのインプット項目追加(利害関係者のニーズ・期待)

 

このように、2015年版を基盤としつつ、現代のビジネス環境に対応した変更が加えられています。今後は国際規格案(DIS)を経て、最終国際規格案(FDIS)での審議後、ISO9001の発行となります。発行後2〜3年の移行期間内に新規格への移行が必要です。



4.2予想される主な改定内容

ここでは、予想される具体的な要求事項の変更点についてまとめました。ただし、内容は確定されたものではないため、変更になる可能性もあります。

 

表7 ISO9001の改訂内容 








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