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会社の運命3.png

中期経営計画とは何でしょうか。様々なとらえ方があります。一般的には、「会社を変えること」、もう少し、具体的に言うと「会社を次の段階の姿に変えるための設計図」と理解しておけばいいでしょう。

 

目 次
​ 0.
  企業経営の目的

1.中期経営計画の真の目的

2.ダメな中期経営計画

3. 中期経営計画の核心となる「たった1つの質問」

4.中期経営計画の骨格を作る3つの質問

5. 強い中期経営計画を創る3条件

6.中期経営計画の核心

7.中期経営計画の本当の作り方

8.最強の戦略フレームワーク

9.戦略ピラミッド

10. 中期経営計画の全体構造

0.企業経営の目的

 

0.1 事業の目的は社会貢献
企業は事業を行っています。たとえば、建設業は「道路」や「橋梁」や「ビル」をつくっています。そして、社会(顧客)は、「道路」や「橋梁」や「ビル」を使用するという利益をえています。それが建設業の社会貢献です。

病院は治療を行います。治療そのものが事業であり、社会(患者)の利益になっています。それが病院の社会貢献です。

これは、どんな事業・業種にも当てはまります。「事業そのものが社会貢献」なのです。企業の正当性や存在の意義はここにあります。

社会を維持するために、人々のニーズを満たすために、誰かが「事業」を行わねばなりません。したがって、事業(社会貢献)をなすために、企業は存続し続ける必要があります。

※ここでいう事業とは公序良俗に反しないことを前提としています。 

   たとえば、麻薬の違法取引、 違法な人身売買、環境破壊、公害の

   発生等は公序良俗に反すると考えています。

※経済学では、製品・サービスを「Goods(良い物)」と「Bads(悪

   い物)」に分けています。麻薬の違法取引、違法な人身売買、環境

   破壊、公害の発生等が「Bads」です。

   一般の企業は「Goods」を取り扱うことを前提としています。

0.2 事業の目的は「顧客の創造」である

デマンドサイドからみると、商取引は「社会貢献」であることが求められますが、サプライサイドからみると「顧客の創造」ということができます。なぜならば、お顧客様が存在しない限り、社会貢献はできないからです。

「顧客の創造」に最も大きな影響をもたらすものは「経営環境」です。経営環境に適応しながら、市場機会を開拓することにより、企業は、顧客を創造し、社会貢献を継続できるのです。

この「顧客の創造」という概念は、ドラッガーが「創造する経営者(P127)」の中で述べているものです。正確には「事業の目的は、顧客の創造である」と書いてあります。
 

当たり前のことと思われがちですが、ドラッガーは「事業の目的は利益である」とはしていません。「事業の目的を利益におくと、事業は失敗する」と述べています。
 

コンサルのティングを受ける時には、重々、注意してください。知らず知らずのうちに、利益が目的になっています。とくに、中期経営計画や人事評価制度を構築するときには、利益を目的にしてはいけません。必ず、失敗します。

 

0.3 企業の存続・発展を保証するもの

企業の存続・発展のために最も重要なもの、それは、いかなる経営環境にも、その変化にも適応できる経営体質です。

 

そして、その経営体質を獲得するために、戦略的な「中期経営計画」は欠くことのできない最も重要な手段です。

企業の存続を保証するものとして、優秀な人材、優れた技術、利益(資産)をあげられる方も多いと思います。

 

しかし、優秀な人材をもつ大企業でも、毎年のように倒産しております。優れた技術もガラパゴス化によって売れなくなっています。

利益(資産)を獲得するスピードと失うスピードは 5倍違います。

そして、雨の日には、銀行は傘を貸してはくれません。

したがって、優秀な人材、優れた技術、利益(資産)あったとしても、それを運用する方法、つまり、戦略的な「中期経営計画」が重要となります。

しかし、中小企業では、その重要な中期経営計画を必ずしも作っておられません。必要性は感じていても作るノウハウがない、というのが実情のようです。

また、「経営計画(目標)は画餅である」「社員がわかってくれず実行できない」というご意見もあります。たしかに、計画した目標通りの結果にはなりません。社員のご理解も頂けないかもしれません。

​しかし、そうではありません。経営計画は、数値を達成することが目的ではありません。経営者の皆様に経営計画の実践を通して、経営力を高めていただくことが、経営計画の真の目的です。そして、企業の存続と成長を確保することが、真の目的なのです。

 

この点につきましては、本ホームページに中期経営計画のVTRがあり、そちらで説明しておりますので、ぜひ参照してください。(https://youtu.be/20mZdigq82k

本稿では、戦略的な中期経営計画についての概要をご紹介させていただきます。

1.中期経営計画の真の目的

 

1.1 中期経営計画の本当の目的

中期経営計画の目的はただ1つです。それは「会社を変えること」です。これを「会社の経営体質を変革する」「会社の運命を変える」ということもあります。

中期経営計画は、単なる数値計画ではなく、また、単なる財務計画でもなく、会社を、次のステップへ進めるための設計図なのです。

なぜ、会社を変えなければならないのか。その理由は、会社は放っておくと、基本的に 今の延長線 で動きます。

  • 同じ顧客

  • 同じ商品

  • 同じ仕事のやり方

 

しかし、経営環境は変化しています。

  • 市場の変化により顧客ニーズは変わります。

  • 技術の進歩により新しい商品が開発されます。

  • 競争の激化により、同じ仕事のやり方では通用しなくなります。

 

そのため、意識的に会社を変えなければ、時代の流れに取り残され、成長できなくなります。成長できない会社は衰退する運命にあります。そうした会社の運命を変える手段が中期経営計画なのです。

 

1.2 中期経営計画で変えるもの

主に次の3つを変えます。

① 事業

  • 伸ばす事業

  • やめる事業

  • 新しい事業

② 資源配分

  • 人材

  • 設備投資

  • 研究開発

③ 組織の動き

  • 重点テーマ

  • 部門の役割

  • 行動の方向

 

1.3 数字は「目的」ではない

売上や利益の数字はよく目立ちますが、それは 結果の指標 にすぎません。本当に重要なのは、

  • 何を変えるのか

  • どこに集中するのか

  • どんな会社になりたいのか

という 戦略 です。したがって、会社を変える中期経営計画とは、「会社を次の段階の姿に変えるための設計図」なのです。

2.ダメな中期経営計画の 5 類型

2.1 ダメな中期経営計画

企業でよく見られる 「ダメな中期経営計画」 には、典型的なパターンがあります。主に次の 5つ です。

 

① 数字だけの計画

  売上・利益の目標だけが並んでいる計画。

  特徴 ・売上○%増

     ・利益○億円

     ・シェア○%

しかし、「どうやって数字を実現するのか」が書かれていない。そのため、現場は動けない。

 

② 今の延長線の計画

  過去の数字をそのまま伸ばしただけの計画。

  特徴 ・売上毎年5%成長

     ・コスト3%削減

     ・歩留率1%改善

つまり、戦略がない。その結果、環境が変わるとすぐ崩れる。

 

③ 作ることが目的の計画

  中期経営計画を 「作るイベント」 にしてしまう。

  特徴 ・分厚い資料

     ・立派な発表会

     ・しかし、その後、使われない

その結果、全く運用されない。作った瞬間がピーク。

 

④ 現場とつながらない計画

経営層だけで作られ、現場の仕事と結びつかない。

   特徴 ・現場が理解していない

     ・日々の仕事と関係ない

     ・KPIが降りてこない

その結果、計画が「絵に書いた餅」になる。

 

⑤ 優先順位がない計画

やりたいことを全部入れてしまう。

  特徴 ・DX

     ・人材育成

     ・海外展開

     ・新規事業

     ・コスト削減

これらを全部やる。結果として、結局どれも進まない。

 

2.2 ダメ中経と良い中経

 ダメな中期経営計画は次の5つです。

  ①数字だけの計画

  ②今の延長線の計画

  ③作ることが目的の計画

  ④現場とつながらない計画

  ⑤優先順位がない計画

 

 逆に、 良い中経とは、次の「3項目が書いてある」。極端にいえば

  「3項目しか書いていない」ということです。

  ①どこに集中するか

  ②何をやめるか

  ③どう変わるか

3. 中期経営計画の核心となる「たった1つの質問」

経営コンサルタントが中期経営計画を構築するとき、必ず最初に確認する質問があります。「なぜ顧客は、あなたの会社を選ぶのか?」です。

 

3.1なぜこの質問が重要なのか

会社が成長する理由はシンプルです。顧客に選ばれるからです。

しかし、多くの中期経営計画では

  • 売上目標

  • 投資計画

  • 新規事業

  • DX

などが並びますが、顧客が選ぶ理由がはっきりしていません。すると、

  • 戦略がぼやける

  • 投資が分散する

  • 競争に勝てない

計画になります。

 

3.2 この質問が意味すること

この問いに答えるためには次のことを明確にする必要があります。

 

① 顧客:誰のための会社か

 ・中小企業

 ・若年層

 ・高級市場

② 価値:何が他社と違うのか

 ・価格

 ・品質

 ・技術

 ・スピード

③ 強み:なぜそれができるのか

 ・技術力

 ・ブランド

 ・データ

 ・サービス

 

3.3 成功している企業は答えが明確

 ・トヨタ自動車     :高品質で壊れない車

 ・セブン-イレブン:近くて便利+商品力

 ・ユニクロ    :高品質で低価格の服

 

中期経営計画の核心は「顧客に選ばれる理由を作ること」です。また「戦略とは、顧客に選ばれる理由を設計すること」です。

 

 

4.中期経営計画の骨格を作る 3 要素

 

4.1 どこで勝つのか

まず決めるべきは 戦う場所 です。具体的には

  • どの地域か

  • どの市場か

  • どの顧客か

例としては、

  • 大都市圏

  • 中小企業向け市場

  • 技術力の高い企業

つまり、戦場を決めるということです。

 

4.2 どうやって勝つのか

次に 勝ち方 を決めます。主な方法は、

  • 価格で勝つ

  • 品質で勝つ

  • 技術で勝つ

  • スピードで勝つ

ここが、戦略の核心です。

 

4.3 何を変えるのか

最後に 会社をどう変えるのか を決めます。たとえば、

  • 事業構造

  • 商品

  • 組織

  • 投資

つまり、今の会社の何を変えるのかです。

 

4.4 中期経営計画の構造

3つの質問を図にすると、中期経営計画は、次の構造になります。

  どこで勝つのか
          ↓
  どうやって勝つのか
          ↓
  勝つために何を変えるのか
          ↓
  具体的な行動(KPI・施策)

 

 

 

換言すると、中期経営計画とは「勝ち方を決める計画」です。そして、経営の世界ではよくこう言われます。「良い戦略はシンプルで

ある」。複雑な計画よりも、

  • 戦う場所

  • 勝ち方

が明確な会社の方が強いのです。

5. 強い中期経営計画を創る3条件

5.1 強い中期経営計画の3条件

(1)何を変えるかが明確

強い中期経営計画は、「何を変える計画なのか」 がはっきりしています。

たとえば、

  • 事業構造を変える

  • 顧客層を変える

  • 収益モデルを変える

  • 強みの事業に集中する

つまり、現状の延長ではなく、会社の姿を変える計画になっています。

 

(2) 集中するテーマが少ない

良い計画は テーマが少ない です。多くの場合3つ前後です。重点テーマを例にとると、

重点テーマ

 ① 市場Aに集中

 ② 高付加価値商品へ転換

 ③ デジタル化による生産性向上

これにより、

  • 経営資源が集中する

  • 社員が覚えられる

  • 組織が動く

戦略は「やること」を決めることですが、それは、同時に「やらないこと」を決めることを指しています。

 

(3)現場の行動につながっている

強い計画は 現場が動ける形 になっています。

つまり、

  • 具体的な施策

  • KPI(Key Performance Indicator:「重要業績評価指標」)

  • 担当部門

  • スケジュール

が見えるものです。その結果、社員が「自分は何をすればいいのか」がわかるように出来ています。

最後に、経営の現場でよく言われる言葉があります。

「良い戦略は、A4一枚で説明できる」。

分厚い計画ほど、実は弱いことが多いのです、と書くと、「へー。A4一枚で出来るんだ」と誤解する人がいます。

上述したことは、期経営計画の結果を、A4一枚にまとめることができるといっているだけです。

しかし、中期経営計画を策定するためには、以下の診断シート、ワークシートが必要です。これらの分析を行い、中期経営計画を策定し、その重要なポイントはA4一枚にまとめることができるという意味です。

 

・セルフチェックシート 

・3C分析シート

・PEST分析シート

・バリューチェーン分析シート

・SWOT分析シート

・PPM分析シート

・営業構造改善目標設定シート

・商品力強化目標設定シート

・顧客一商品構成表

・新規事業分野優先度チェックシート

・新規事業分野進出プラン検討シート

・3ヶ年行動プランシート

・担当者別行動ブランシート

・想定機能分担図作成シート

・経営機能チェックリスト

・経営陣能力チェックリスト(1)

・経営陣能力チェックリスト(2)

・経営陣の能力向上プランシート

・経営陣の能力向上目標一覧表

・管理者能力チェックリスト(1)

・管理者能力テェックリスト(2)

・管理者育成プランシート

・組織風土チェックリスト

・組織風土改善プランシート

・実行予算作成シート

・計画推進スケジュール表

・計画推進委員会のメンバー表&日程表.

・決意表明記入シート 

 

 

5.2 KPI(Key Performance Indicator)

(1) KPIとは

KPI(Key Performance Indicator)は「重要業績評価指標」と訳され、KGI(最終目標)を達成するための過程(プロセス)が適切に実施されているかを測定する「中間指標」です。行動の進捗を定量的に「見える化」し、ボトルネックの早期発見と改善に役立てることで、確実に目標達成へ導きます。

 

KPI (Key Performance Indicator) と KGI  (Key Goal Indicator)

 

(2) KPIの重要ポイント

  • 定義: 最終目標(KGI)達成までのプロセスを定量的に評価・分析する中間指標。

  • 目的: 達成に向けた進捗の「見える化」と、未達成時の原因究明(軌道修正)。

  • SMARTの法則: 具体性(Specific)、測定可能(Measurable)、達成可能(Achievable)、関連性(Relevant)、期限(Time-bound)を意識して設定する。

  • KGIとの違い: KGI(Key Goal Indicator)は最終ゴール(例:売上1億円)、KPIはそこに至るまでの行動(例:訪問件数、成約率)。

  • 設定のコツ: KPIツリーを作成し、数(3〜5個程度)を絞り込む。

 

(3) KPIの設定例

1)営業: 新規訪問件数、提案数、テレアポ数、成約率。

2)Webマーケティング: UU(ユニークユーザー)数、CTR(クリック率)、CPA(顧客獲得単価)、CVR(コンバージョン率)。

3)人事/採用: 応募数、面接実施率、内定辞退率。 

 

KPIマネジメントを機能させるには、KGIと直接連動した中間目標を設定し、定期的にモニタリングすることが不可欠です。

KPIとKGI.png

6.中期経営計画の核心

 

6.1 わが社は、どこで勝つのか

中期経営計画の核心とは、一言で言うと、中期経営計画の核心は「わが社は、どこで勝つのか」という問いに答えることです。なぜ、これが核心なのでしょうか。そして、一番難しいのでしょうか。

それは、会社の資源は限られているからです。だから、「どこで勝つのか」を決めなければ、会社の資源を分散させて配置することになるからです。

戦略の基本は「選択と集中」です。戦う市場を選択して、そこに経営資源を集中させることが要諦です。そのために「どこで勝つのか」を決めなければならないのです。

 

6.2 なぜ、核心が一番難しいのか

会社の資源は限られています。

  • 人材

  • お金

  • 時間

  • 技術

しかし、市場には

  • 多くの顧客

  • 多くの事業

  • 多くの機会

があります。すべてを取ることはできません。だから経営は「どこで戦うか」を決めなければなりません。

 

6.3 具体的には何を決めるのか

例えば、次のようなことです。

・市場:どの市場に集中するか

・顧客:どの顧客を狙うか

・商品:何を強みにするか

・地域:どこで勝つか

 

6.4 戦略とは何か

経営の世界ではよくこう言われます。戦略とは「やらないことを決めること」

です。つまり、

  • 何をやらないか

  • どこに集中するか

を決めることが中期経営計画の核心です。

 

6.5多くの会社で起きる問題

この決断が難しいため、

  • 全部やる

  • みんなに配慮する

  • 今の事業を全部守る

という計画になります。すると、戦略がなくなるのです。

7.中期経営計画の本当の作り方

 

7.1 バック・キャスティング

計画の策定順序は重要です。多くの会社は間違えて

・数字 → 計画

で作ります。しかし、正しい策定手順は

・環境 → 未来 → 戦略 → テーマ → 数字

です。中期経営計画とは、「未来から逆算して会社を変える設計図」です。なぜなら、未来から現在に引き寄せるようにしなければ、現在から出発したとき未来に到達できないからです。

 

 

7.2策定手順の5ステップ

(1) 環境を理解する

まず 会社の外部と内部を正しく見る ことです。見る視点は次のとおりです。つまり、「この会社はどこで戦えるのか」を理解します。

 

①外部環境

  • 市場の成長

  • 顧客の変化

  • 技術の変化

  • 競争

②内部環境

  • 強み

  • 弱み

  • 収益構造

  • 人材

 

(2) 目指す姿を決める

次に 3〜5年後の会社の姿 を決めます。これは「会社の未来像」です。

  • 売上構成

  • 主力事業

  • 市場ポジション

  • 強み

たとえば、

  • 「○○市場でトップ3」

  • 「高付加価値型企業へ転換」

  • 「海外売上30%」

 

(3) 戦略を決める

未来像に向かうための 戦い方 を決めます。ここが 中期経営計画の核心 です。決めることは、

  • どの事業に集中するか

  • どこから撤退するか

  • どこに投資するか

つまり、資源配分です。

 

(4) 重点テーマを決める

戦略を実行するための 重点テーマ を決めます。重点テーマとは、戦略のパフォーマンス・ドライバーとなるもので、重点テ―マを実行すると戦略が実現できるものを指します。重点テーマは3つ程度です。たとえば、

①主力事業の高付加価値化

②生産性改革

③新市場開拓

ここで大切なのはテーマを増やさないことです。

〈重点テーマ〉

バランスト・スコアカードでは、戦略は4つの視点で設定されます。これを実現するための手段が重点テーマです。

戦  略    重点テーマ

財務の視点 売上高の増大、原価低減、資産の効率的利用

顧客の視点 顧客満足度の向上、新規市場の開拓、ブランドの差別化

業務の視点 業務改善、新技術の導入、リードタイムの短縮

学習と成長の視点 人材育成、ITインフラの整備、組織文化の醸成

 

(5) 実行計画に落とす

最後に 具体的な行動 に落とします。つまり、現場が動ける計画 にします。必要なものは、次のとおりです。

  • KPI

  • 年度計画

  • 投資計画

  • 担当部署

  • スケジュール

8.最強の戦略フレームワーク

 

8.1 ポーターの基本戦略

経営や戦略の分野で広く使われる 「最強の戦略フレームワーク」 とよく言われるものは、経営学者 マイケル・ポーター が提唱した考え方です。それは、競争戦略(Competitive Strategy)と呼ばれています。

ポーターの基本戦略によると、企業が取れる戦略は、基本的に 3つしかない とされています。

① コストリーダーシップ:一番安く作る会社になる

特徴 ・ 価格競争に強い

 例 ・大量生産

   ・効率化

   ・コスト削減

 

② 差別化:他社と違う価値を作る

特徴 ・高い価格でも売れる

 例 ・高品質

   ・ブランド

   ・技術

   ・デザイン

 

③ 集中戦略:特定の市場に絞る

特徴 ・小さくても強い会社になる

 例 ・特定の顧客

   ・特定の地域

   ・特定の用途
 

8.2 なぜこのフレームワークが強いのか

理由は単純です。中途半端な会社は勝てないからです。たとえば

  • 安くない

  • 特別でもない

会社は、真ん中で負けると言われます。ポーターはこれを「Stuck in the Middle(真ん中で立ち往生)」と呼びました。板挟みや中途半端な状態で身動きが取れないという意味です。

 

中期経営計画で一番重要なことは「わが社は、どの戦略で勝つのか」を決めることです。つまり、

  • 安さで勝つ会社か

  • 価値で勝つ会社か

  • 特定市場で勝つ会社か

を明確にします。一流企業はここがはっきりしています。たとえば、

  • 低価格型

  • 高付加価値型

  • ニッチトップ型

などです。経営の世界ではよくこう言われます。「戦略とは選択である」。つまり、「選ばない会社は勝てない」のです。

9.戦略ピラミッド

9.1戦略ピラミッドの4階層

戦略ピラミッドは、上から下に 4つの階層 で構成されます。

 

① ビジョン(将来像)

一番上にあるのが 会社の未来の姿 です。ビジョンは次のように表します。

 ・世界トップシェア

 ・環境技術でNo.1

 ・顧客価値No.1企業

つまり、「3〜5年後どんな会社になるのか」を表したものです。

 

② 戦略

ビジョンを実現するための 勝ち方 です。決めることは、次のものです。

 ・どの市場で勝つか

 ・どの顧客を狙うか

 ・何を強みにするか

ここが、中期経営計画の核心 です。

 

③ 重点テーマ

戦略を実行するための 重要プロジェクト です。たとえば、

 ・DX推進

 ・高付加価値商品

 ・新市場開拓

 ・生産性改革

通常は、3つ程度に絞ります。

 

④ 実行(KPI・施策)

一番下が 現場の行動 です。ここには、社員が毎日やる仕事がきます。

 ・売上目標

 ・投資計画

 ・KPI

 ・年度計画

 

9.2戦略ピラミッドの重要なポイント

多くの会社は、ピラミッドを下から作ります。
 

  KPI
   ↓
  施策
   ↓
  戦略

 

しかし、本来は、上から作ります。


  ビジョン(未来)
   ↓
    戦略
   ↓
  重点テーマ
   ↓
    実行

 

中期経営計画とは、「未来 → 戦略 → 実行」をつなぐ設計図です。

です。

10. 中期経営計画の全体構造


10.1中期経営計画の全体構造


  ① 市場
     ↓
  ② 強み
     ↓
  ③ 戦略
     ↓
  ④ 重点テーマ
     ↓
  ⑤ 実行
     ↓
  ⑥ 成果

 

 

10.2 各ステップの意味

① 市場:まず どの市場で戦うか を決めます。見るものは次の通りです。

  • 顧客

  • 市場成長

  • 競合

 

② 強み:次に 自社の競争力 を整理します。

  • 技術

  • ブランド

  • コスト

  • サービス

 

③ 戦略:市場と強みを組み合わせて

どこで、どう勝つかを決めます。

 

④ 重点テーマ

戦略を実行するための 重要プロジェクト です。

  • DX

  • 新商品

  • 海外展開

  • 生産改革

通常 3つ程度 に絞ります。

 

⑤ 実行:戦略を 具体的な行動 にします。

  • KPI

  • 投資

  • 組織改革

 

⑥ 成果:結果として

  • 売上

  • 利益

  • 成長

が生まれます。

 

この図の一番重要なポイント 

:経営の成果は、

成果=市場 × 強み × 戦略 × 実行

で決まります。つまり、数字は結果であって出発点ではないということです。中期経営計画とは、「勝てる市場で強みを使って成果を出す設計図」です。このことを、ピーター・ドラッガーは「成果は、(市場)機会の開拓によって得られる」と述べています。

中期経営計画の全体像.png

11.中期経営計画の成功例

11.1 トヨタの中期経営戦略

トヨタは1980年代以降、長期的な戦略と中期計画を積み重ねながら世界トップクラスの自動車メーカーへ成長しました。

 

① 勝つ領域を明確にした

トヨタは

  • 大衆車

  • 高品質

  • 高効率生産

という領域で勝つことを決めました。つまり、

    品質+コスト

という強みを徹底しました。

 

② 生産方式を武器にした

トヨタの最大の武器は、トヨタ生産方式です。

その特徴は、

  • ムダをなくす

  • 在庫を減らす

  • 改善を続ける

これにより

  • 高品質

  • 低コスト

を両立しました。

 

③ 技術の先行投資

トヨタは1990年代から、トヨタ・プリウス などの ハイブリッド車 に大きく投資しました。当時は、

  • 市場が小さい

  • 利益が出にくい

と言われましたが、後に、環境車市場で世界をリードしました。

その結果、トヨタは

  • 世界販売トップクラス

  • 高い利益率

  • 強いブランド

を持つ企業になりました。

この成功のポイントはトヨタの戦略にあります。

上述したように、トヨタの戦略は次の3つです。

①勝つ領域を決めた
②強みを徹底した
③長期投資を続けた

経営の世界では、「トヨタの本当の商品は車ではない」

それは「経営システム」だと言われます。

 

11.2 セブン-イレブンの中期経営計画

セブン-イレブンは、日本のコンビニ業界を作り、現在もトップクラスの企業です。この成功は、非常に 明確な戦略 に基づいていました。セブン-イレブンの戦略の核心は次のように考えられています。

 

① ドミナント戦略(地域集中)

セブン-イレブンは店舗を 地域に集中して出店 しました。たとえば、

  • 同じ地域に多くの店舗

  • 配送効率が上がる

  • ブランド認知が高まる

これをドミナント戦略と言います。

 

② 小売ではなく「情報産業」

セブン-イレブンは早くから

  • POSシステム

  • 販売データ分析

  • 需要予測

を導入しました。つまり、データで売れる商品を決めるという経営です。

 

③ 商品を毎日変える

普通の小売業は

  • 商品を長く売る

しかし、セブン-イレブンは

  • 売れない商品はすぐ入れ替える

  • 季節商品を増やす

という戦略でした。

 

その結果、セブン-イレブンは

  • コンビニ売上トップクラス

  • 高い利益率

  • 強い商品力

を持つ企業になりました。

この事例のポイント、すなわち、セブン-イレブンの成功要因は次の3つです。

①地域集中(ドミナント)
②データ経営
③商品回転の速さ

 

経営の世界では、セブン-イレブンは「小売業ではなく、情報産業」と言われます。つまり、戦略がビジネスモデルを作った会社なのです。

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