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中期経営計画

0.企業経営の目的

0.1 事業の目的は社会貢献
 

企業は事業を行っています。たとえば、建設業は「道路」や「橋梁」や「ビル」をつくっています。そして、社会(顧客)は、「道路」や「橋梁」や「ビル」を使用するという利益をえています。それが建設業の社会貢献です。

病院は治療を行います。治療そのものが事業であり、社会(患者)の利益になっています。それが病院の社会貢献です。

これは、どんな事業・業種にも当てはまります。「事業そのものが社会貢献」なのです。企業の正当性や存在の意義はここにあります。

社会を維持するために、人々のニーズを満たすために、誰かが「事業」を行わねばなりません。したがって、事業(社会貢献)をなすために、企業は存続し続ける必要があります。

※ここでいう事業とは公序良俗に反しないことを前提としています。たとえば、麻薬の違法取引、

 違法な人身売買、環境破壊、公害の発生等は公序良俗に反すると考えています。

※経済学では、製品・サービスを「Goods(良い物)」と「Bads(悪い物)」に分けています。

   麻薬の違法取引、違法な人身売買、環境破壊、公害の発生等が「Bads」です。

   一般の企業は「Goods」を取り扱うことを前提としています。

0.2 事業の目的は「顧客の創造」である

デマンドサイドからみると、商取引は「社会貢献」であることが求められますが、サプライサイドからみると「顧客の創造」ということができます。なぜならば、お顧客様が存在しない限り、社会貢献はできないからです。

「顧客の創造」に最も大きな影響をもたらすものは「経営環境」です。経営環境に適応しながら、市場機会を開拓することにより、企業は、顧客を創造し、社会貢献を継続できるのです。

この「顧客の創造」という概念は、ドラッガーが「創造する経営者(P127)」の中で述べてい

るものです。正確には「事業の目的は、顧客の創造である」と書いてあります。
 

当たり前のことと思われがちですが、ドラッガーは「事業の目的は利益である」とはしていません。「事業の目的を利益におくと、事業は失敗する」とも述べています
 

コンサティングを行う時には、重々、注意してください。知らず知らずのうちに、利益が目的になっています。とくに、中期経営計画や人事評価制度を構築するときには、利益を目的にしてはいけません。必ず、失敗します。

 

0.3 企業の存続・発展を保証するもの

企業の存続・発展のために最も重要なもの、それは、いかなる経営環境にも、その変化にも適応できる経営体質です。

 

そして、その経営体質を獲得するために、戦略的な「中期経営計画」は欠くことのできない最も重要な手段です。

企業の存続を保証するものとして、優秀な人材、優れた技術、利益(資産)をあげられる方も多いと思います。

 

しかし、優秀な人材をもつ大企業でも、毎年のように倒産しております。優れた技術もガラパゴス化によって売れなくなっています。利益(資産)は獲得するスピードと失うスピードは 5倍違います。また、雨の日には、銀行は資金を提供してくれません。

したがって、優秀な人材、優れた技術、利益(資産)よりも、それを運用する方法、つまり、戦略的な「中期経営計画」が重要となります。

しかし、中小企業では、その重要な中期経営計画を必ずしも作っておられません。必要性は感じていても作るノウハウがない、というのが実情のようです。

また、「経営計画(目標)は画餅である」「社員がわかってくれず実行できない」というご意見もあります。たしかに、計画した目標通りの結果にはなりません。社員のご理解も頂けないかもしれません。

​しかし、そうではありません。経営計画は、経営者のお役に立てばよいのです。経営者の皆様に経営計画の実践を通して、経営力を高めていただくことが、経営計画の真の目的です。そして、企業の存続と成長を確保することが、真の目的なのです。

 

この点につきましては、本ホームページに中期経営計画のVTRがあり、そちらで説明しておりますので、ぜひ参照してください。(https://youtu.be/20mZdigq82k

本稿では、戦略的な中期経営計画についての概要をご紹介させていただきます。

1.中期経営計画の構成

 

1.1 中期とは

中期経営計画とは、長期的な経営ビジョンを実現するために、中期的にやるべき戦略を示したものです。

 

 • 長期経営計画:10年後に目指す姿などをまとめたもの。

   中小企業では、経営者のライフプランとして作成されることが多い。

 

    •中期経営計画:3~5年のスパンで作成される会社の戦略的な活動計画。

    •短期経営計画:毎年作成されるもの。予算編成を指す。

 

1.2 短期計画の限界

将来の計画を策定する意味は、活動のムダを省き、効果的に目標を達成するためです。

 

計画期間は短い方が経営計画は策定しやすいのですが、中期経営計画のもとで短期経営計画を動かす方が経営は安定します。

その理由は、短期計画ですと、目標に向けての動きがジグザクになり、あるいは乖離しがちだからです。中期の目標を達成するには、どうしても、3年後からのバック・キャスティングが必要となります。

中期計画と短期計画.png

1.3 ローリング・プラン

中期経営計画の計画期間は3年ですが、いったん作成すると、3年間ほったらかしにするのではなく、毎年、見直していくローリングプランとなっています。

ローリングプラン.png

1.4 経営戦略の管理

目標を実現する戦略は、目標と現状のギャップを埋めるための方策になります。

 

しかし、現実には戦略が予定通りに達成されるわけではありません。最初は勢いよくスタートしても、途中で減速・停滞したり、目標と異なる方向に軌道がズレたりします。

 

目標を実現するには、モニタリングが必要で、予定の軌道を逸脱した場合には、軌道を修正するための「管理」を行います。管理には、次の6つの領域があります。

  ①経営管理

  ②商品開発管理

  ③生産管理

  ④営業管理(店舗管理)

  ➄人事管理

  ⑥財務管理

 

経営戦略を立案しても、経営環境が変化したり、不測の事態が発生するので、戦略目標の達成が危うくなります。中期経営計画(経営戦略)のコンサルティングを行う時は、上記の 6 つの視点でモニタリングし、管理してください。

目標と現状のギャップ.png

2.中期経営計画書の意義

 

2.1 経営計画は単年度計画で考えることはできない

会社の中には、新製品開発、製造ライン新設、人材育成、経営改革など、2~3年程度のスパンで考えなければならない課題があります。

 

これらの課題は 1 年単位で定める短期経営計画(予算管理)で行えるものではありません。たとえば、単年度での黒字化は困難場合でも、中期的に黒字化できるという場合があります。

 

また、今期の財務的な利益だけに目を奪われ、将来を考えなければ、そして、商品開発を行わず、設備投資をせず、人材採用・育成をなさず、インフラや IT の整備をしなければ、短期的に利益を出すことは出来ます。

 

しかし、商品開発や社員教育や設備投資していかななければ、経営環境の変化に適応できません。環境変化への対応に遅れれば、その損失は、短期的利益を上回り、企業は存続さえ危うくなります。

毎年、毎年、何千件という倒産が起きていますが、倒産の兆候は、毎年、経営計画を策定していれば 3 年前にはわかるものです。そして、3年あれば事業計画の見直しにより、倒産は防ぐことが出来ます。

 

しかし、単年度計画では、倒産の兆候を発見しても、時すでに遅く、対処が容易でなくなっていることが多いのです。

2.2 自社の経営の現状が把握できる

中期経営計画によって、自社が抱える内部環境や外部環境の課題を洗い出せます。たとえば、「社員の年齢構成」という内部環境の課題を把握すると、採用計画の見直しの必要性が把握できます。

 

また内部環境の課題を把握すると、自社の強み・弱みを分析できます。そして、どの市場を、自社の、どの強みで開拓するかが明確になります。

さらに「競合他社のシェア」という外部環境を把握すると、事業方針や商品開発などの課題に気づきが得られます。

 

外部環境を把握できなければ、ビジネスチャンスを捉えることができません。また自社の市場に低価格商品が流入したり、競合が参入しているというビジネスリスクを把握することができません。

 

2.3 取り組むべき課題が明確になる

経営において「取組課題」を明確にするというときは、まず経営理念を策定します。次に経営理念の達成目標を経営目標として定めます。この段階で、経営戦略診断を行います。

 

 

 

 

そして、目標を達成する計画を策定します。これが中経(中期経営計画)です。これによって、経営理念を実現する道筋が、明確になります。

 

これにより、目標の達成に向けて、どんな商品・市場に力をいれるのか。どんな組織を作ればよいのか、従業員数はどれくらい増やせばいいのか、確保すべき予算はいくらかなどが明確となります。

このように今後の具体的なアクションや達成すべき数値が明確化されると、活動が容易になります。また、具体的な数値があれば、後から成果を検証しやすくなります。

 

2.4 社員の意識向上につなげられる

経営戦略の基本は「統合と自己統制」にあると、ダグラス・マクレガーは、その著「企業の人間的側面」の中で言っています。

 

統合とは会社目標と個人目標の統合のことです。会社の目標がなければ、社員は自己の目標と会社の目標を統合することが出来ません。その会社の目標を確立するものが中期経営計画です。

 

そして、統合された目標による自己統制(目標管理)が出来なくなります。

その結果は、会社の目標を意識しない、個々人のバラバラな活動となってしまいます。

中期経営計画を策定すると、明確な目標ができ、達成の道筋が見えるので、経営陣と社員と一体となった取り組みが行えます。

明確な目標ができ、達成の道筋が見えるので、社員は自ら考え、創意工夫をすること(目標管理)ができるので、社員のモチベーションも高まります。

 

3.中期経営計画の全体像

中期経営計画の全体像は、次の通りです。①経営理念、②経営戦略診断、③経営戦略立案、④活動計画立案と数値目標設定、➄進捗管理。これらの相互関係を図示すると、次図のようになります。ここでは、管理サイクルをPDCとしております。

中経の策定と管理.png
中期経営計画の全体像.png

4.中期経営計画策定スケジュール
 

4.1 プログラムの構

 中期経営計画を策定するプログラムにはいくつかのパターンがあります。ここでは、中堅・中小企業向けのプログラムをご紹介いたします。本プログラムは、8つのフェーズに分かれています。その主な概要は、以下の通りです。

 

フェーズ0 オリエンテーション

・研修開始のあいさつをし、研修の目的と意義を確認する。また、研修の内容とスケジュールを確  

 認する。

 

フェーズⅠ なぜ中期経営計画が必要なのか

・講義によって、中期経営計画の必要性に気づいてもらい、これまでの自社の経営方法に問題がな

 かったかを検討する。

 

フェーズⅡ 自社の現状をチェックする

・「収益構造」「営業構造」「商品力」の3つの視点から、自社を取り巻く環境及び、企業体質に

 ついてチェックする。

 

フェーズⅢ 3年後をイメージする

・講義によって、戦略的中期経営計画の2大テーマ「営業構造」「商品力」について理解を得る。

・また、フェーズ2で得られたチェック結果をもとに討議し、「営業構造」と「商品力」という2つ

 の視点から3年後の目標を設定する。

 

フェーズⅣ 新規事業分野の模索

・講義により、新しい事業分野を考える視点と、新規事業分野へ進出する際の企業革新の方向性に

 ついて理解を得る。

 

フェーズV 行動プランをつくる

・フェーズⅢで設定した目標を実現するために、具体的にどのような行動をとるべきか、また誰が

 担当するかを明らかにする。

 

フェーズVI 人材育成プランをつくる

・フェーズVで作成した行動プランをもとに、3年後の機能分担を想定し、経営陣の自己革新プラ

 ン、管理者の育成プラン及び組織風土の改善プランを策定する。

 

フェーズⅦ 計画推進の体制をつくる

・前フェーズまでに立てた計画を確実に実行するために実行予算を立て、計画推進のための管理体

 制をつくる。

・最後に計画を推進していく各人の決意を全員の前で表明し、研修の成果を確認し合う。

4.2 中期経営計画策定のタイムスケジュール

  中期経営計画を策定するタイムスケジュールの例を示すと次のようになります。ここでは、4回の例を示しております。1 週間に 1 度のスパンで行えば  1  か月以内に完成します。2  週間に 1 度のスパンで行えば 2 か月で完成します。

成長中経研修時間.png
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