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CSR

​企業の社会的責任


     - 目  次 -

1.企業の社会的責任

2.CSRは社会の需要

3.CSRの内容

4.社会的責任の原則

5.コンプライアンス

6.社会的責任の課題

7.CSRの実施方法

​8.ISO26000(社会的責任に関する手引き)

1.企業の社会的責任

CSRとは、Corporate Social Responsibility(企業の社会的責任)の略であり、企業が遵法性や社会的公正や環境への配慮を活動のプロセスに組み込む責任のことを言います。

 

社会的責任は、19世紀、慈善活動としてはじまりました。その後、労働慣行や公正な事業慣行というテーマが取り入れられ、やがて、人権、環境、消費者保護、汚職防止などの主題に広がっていきました。

 

社会的責任という用語が広く用いられるようになったのは1970年代からです。企業だけでなく、団体や自治体の組織が、自らも持続可能な発展に寄与する責任を負うと認識するようになり、社会的責任が全ての組織に当てはまるという考え方が広がっていきました。

社会的責任の要素は、ある特定の時期の社会の期待を映し出すものであり、社会の関心が変化するにつれ、組織に対する社会の期待も変化していきます。これからの組織は、そのような関心や期待に対処しくことが当たり前になっていきます。

企業に対する社会的要請の範囲が広げられ、企業は提供する生産物の質だけでなく業務活動のプロセスに関して社会と市場の評価を受けるようになりました。

 

たとえば、世界的なシューズメーカーのサプライチェーンで、児童労働、強制労働、低賃金労働が発覚したために世界的な不買運動が起きました。

 

CSRは、組織の持続可能な発展への貢献を助けることを意図しており、利潤追求を否定するものではありません。利潤追求のためには、法令遵守は最も基本的な義務となります。

 

そのうえで、CSRに取り組む組織は、国際行動規範との整合性をとりつつ、経済状況の違いに加えて、社会、環境、倫理、文化、政治、組織の多様性を考慮して、法令遵守以上の活動をも意図するようになっています

1960年代までは、顧客ロイヤリティのような数値化が困難な指標は、分析がためらわてきました、ところが21世紀になると、品質・価格が同じならば、社会貢献度の高い企業から購入しようという機運が一挙に高まりました。SCRゃSDGsが購入の条件となってきたのです。

 

こうした状況で、CSR を進めるためには、CSRを戦略的に捉え、製品・サービスの特性と業務のプロセスにCSRを埋め込んで、企業の存続・発展と企業の社会的責任を同時に求める必要が出てきました。

 

そのため、これからは、企業価値を高めるSCRゃSDGsが経営戦略の中心的な課題となっていくものと考えられています

 

2.CSRは社会の需要

「CSRは、社会の要請(需要)に対する企業の対応(供給)である」ととらえることができます。そのためには、法令遵守は当然のこととし、法令遵守を超えて、企業が自発的・裁量的な行動をとることとが求められます。
 

企業は社会の一員であるという大前提のもとでは、その社会の倫理や社会理念と抵触しない利潤追求行動が求められます。公害や環境汚染の予防や経済的・法的義務を超えて社会的な義務(たとえば説明責任)を負っています。
 

そして、ステークホルダー(利害関係者)が、それらの責任を求めていますので、組織は、それらの責任(CSR)を果たしていることを周知する必要があります。

このように、現代社会では、企業は、製品・サービスの価値だけでなく、組織のレスポンシビリティ(社会的責任)が、営業成果に影響を与えるようになってきました。

 

3.CSRの内容

CSRの目的が、組織の持続可能な発展への貢献であることから、適用範囲はかなり広く、法令順守を基本として、法令順守以上の活動として、経済、社会、環境、法、文化、政治、組織の状況などが含まれます。これらの経営環境のもとで、以下の項目について、競争優位を勝ち取るための要素の全体ということになります。

・組織の市場(顧客層、チャネル)

・組織の評判

・労働者、顧客、取引先を引き付け、留めておく組織の能力

・従業員のモラル、コミットメント、生産性の維持

・投資家、所有者、資金寄与者、スポンサー、金融界の見解

・組織と、会社、政府、メディア、供給業者、同業者、顧客との関係

・組織が活動するコミュニティとの関係

 

CSRは、社会的責任の原則、社会的責任の認識、ステークホルダ一との対話、社会的責任に関係する課題、組織が社会的に責任ある行動を取る方法から構成されます。

 

これらの部分が、全ての組織に対して同等に用いられるわけではありませんが、その組織が取り組むにふさわしい課題が何であるかを、特定することは、個々の組織の責任です。

4.社会的責任の原則

社会的責任の目的は、「持続可能な発展に貢献すること」です。この目的に関して、社会的責任の原則を網羅した明確なリストは存在しません。しかし、通常、社会的責任の7つの原則があると考えられています。

持続可能な発展将来の世代のニーズを充足する能力を損なうことなしに、今日の 

 世代のニーズを満たしうるような発展。人口の爆発的増加により、2030年には、地

 球  1.7 個分の資源が必要だと考えられています。「これを地球 1 個分で充足できるよ 

 うにしよう」という考えを「持続可能な発展」と呼んでいます。

 

(1)説明責任

経営層は、株主に対して説明する義務を負います。また、法規制に関し、規制当局に対して説明する義務を負います。組織の影響を受ける人々や、社会に対して、報告を行う義務があります。説明責任には以下が含まれます。

 ①不正行為が行われた場合の責任をとること

 ②その不正行為を正すために適切な措置をとること。

 ③不正行為が繰り返されないよう予防するための行動をとること。

 

(2)透明性

透明性とは、自らが責任をもつ方針・決定・活動について、明確で、正確かつ完全な方法によって、適切かつ十分な程度まで、情報を開示することをいいます。

 ①情報は、時宜にかなった、事実に基づいたもので、明確かつ客観的な方法で提示

  する。

 ②透明性の原則は、機密情報の開示を要求するものではなく、また、部外秘の情

  報、または公表すると法的な義務、商業上の義務、安全上の義務もしくは個人の

  プライバシーに関する義務に違反することになるような情報の提供を要求するも

  のではない。

 

(3)倫理的な行動

組織の行動は、正直、公平、誠実という価値観に基づくというものです。組織は、次のような倫理的な行動を積極的に促進すべきです。

 ①その組織の中核的な価値と原則を特定し表明する。

 ②その組織の意思決定と他者との交流において、組織内で倫理的な行動を促進でき 

  るような統治構造を構築し運用する。

 ③その組織の目的と活動にふさわしく、ここに示した社会的責任の7つの原則に則し

  た、倫理的な行動の基準を特定し、導入し、適用する。

 ④その組織の倫理的な行動の基準の順守を奨励し、促進する。

 

(4)ステークホルダーの利害の尊重

組織は、ステークホルダーの利害を尊重し、よく考慮し、対応する必要があります。組織には、次の事項を行うことが期待されています。

 ①誰が、組織のステークホルダーかを特定する.

 ②ステークホルダーの利害と法的権利を認識し、当然払うべき注意を払いう。ま

  た、それらのステークホルダーが懸念を表明した場合はそれに対応する。

 ③ステークホルダーが、その組織の統治において正式な役割をもたなくとも、また

  は自らの利害を認識していないとしても、組織の決定または活動によって影響を

  受ける可能性のあるステークホルダーの見解を考慮する.

 

(5)法の支配の尊重

法の支配の尊重とは、組織は全ての関連法令・規制に従うという意味です。これはまた、関連法令・規制を知り、組織内でこれらの関連する法規制を順守しなければならないことを通知し、それらの措置を実施すべきであるということを意味しています。組織は、次の事項を行う必要があります。

 ①その組織が活動する全ての法的管轄区域において、たとえその法令・則制が適切

  に執行されていない場合であっても、法的要求事項を順守する。

 ②自らの関係・び活動が、想定された、適用される法的枠組みを確実に順守するよ

  うにする。

 ②全ての法的義務を把握しておく。

 ③関連する法規制の順守の状況を定期的に確認する。

 

(6)国際行動規範の尊重

国内法またはその施行によって、環境または社会を守るための適切な保護手段がとられていない状況においては、組織は少なくとも国際行動規範を尊重するよう十分努力すべきです。

国内法またはその施行が国際行動規範と対立する国々において、組織は、国際行動規範を最大限尊重するよう十分に努力すべきです。

 

(7)人権の尊重

国際人権章典に規定されている権利を尊重し、可能な場合は、促進するようにします。

人権が保護されていない状況では、人権を尊重するための措置をとります。

法又はその施行によって人権が適切に保護されていない状況では、国際行動規範の尊重の原則を守ります。

※国際人権章典:国連総会で採択された「世界人権宣言と」「国際人権規約(社会権規約・自由権規約)」の通称です。 社会権規約は「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」、自由権規約は「市民的及び政治的権利に関する国際規約」を指し、法的拘束力があります。

5.コンプライアンス

CSRは、あらゆる規範を含む概念ですが、不祥事としてマスコミで取り上げられるものは、実際には、コンプライアンス違反です。コンプライアンスは「法令遵守」と訳されています。

 

したがって、CSRに取り組む場合に、まずコンプライアンスに取り組むことが効率的です。なお、コンプライアンスには、業界の規制までを範囲にすることが普通です。

 

コンプライアンス違反の種類はさまざまなものがあります。

 

①粉飾・虚偽報告  

 脱税、粉飾決算、•産地偽装・製品性能の偽装、出資法違反、横領、談合、リコール 
 隠し、個人情報流出。

 

②競争関係

 企業の公正な競争を阻害するものが該当します。

 カルテル、入札談合、取引先制限、市場分割、差別対価、差別的取扱、不当廉売、 
 知的財産権侵害、企業秘密侵害、贈収賄、不正割戻、など。


③消費者関係

 消費者が不利益を被るような法令違反、社会的規範違反は企業の社会的信頼を大き
 く損ねるものになります。

 有害商品、欠陥商品、虚偽広告、誇大広告、悪徳商法など。
 

④投資家関係

 投資の公正な経済活動が制限されたり、阻害されたりする法令違反を指していま 
 す。インサイダー取引、利益供与、損失補償、作為的市場形成、相場操縦。

 

⑤従業員関係

 従業員関係にあるのは、健全な労使関係の構築に大きな影響を与えるものをいいま

 す。

 •賃金不払い、36協定違反、労働災害、職業病、メンタルヘルス障害、過労死、雇用
  差別、プライバシー侵害、セクシャル・ハラスメント

 

⑥地域社会関係

 地域社会関係にあるのは、住環境などにも影響を与えかねないため、コンプライア
 ンスが厳しく求められる関係でもあります。

 •工場災害、環境汚染、産業廃棄物不法処理、不当工場閉鎖、計画倒産
 

⑦政府関係

 政府関係にあるのは、クリーンな政治の実現は、民主主義にとって重要な問題で
 す。有権者としても常にチェックしていくべきでしょう。

 •脱税、贈収賄、不正政治献金、報告義務違反、虚偽報告、検査妨害、捜査妨害。
 

⑧国際関係

 国際関係にあるのは、グローバル経済下で国際的な信用を得るためにも、国際関係
 に関するコンプライアンスに目を光らせていく必要があるでしょう。

 •租税回避、ソーシャル・ダンピング、不正資金洗浄、産業スパイ、多国籍企業の問
   題行動〈贈収賄、劣悪労働条件、利益送還、政治介入、文化破壊〉。

 

⑨地球環境関係

 地球環境関係にあるのは、地球は一つしかなく、環境や自然に国境はありません。  
 国際社会が一丸となってコンプライアンスを監視していくことが求められていま 
 す。

 •環境汚染、自然破壊、地球温暖化、カーボンニュートラル

6.社会的責任の課題

組織の社会的責任の範囲を定義し、関連する課題を特定し、その優先順位を設定する必要があります。その際、一般には、次のテーマを中心に取り組むものとされています。

 

 ①組織統治

 ②人権

 ③労働慣行

 ④環境

 ➄公正な事業慣行

 ⑥消費者課題

 ⑦コミュニティへの参画

 

組織は、これらの課題を全体的な視点で俯瞰することが大切です。つまり、1つの課題に集中するのではなく、①~⑦の全ての課題とそれらの繋がりを考慮すべきです。たとえば、人権と労働慣行にはつながりがあります。

 

1つの課題に取り組みが、他の課題への取り組みと両立しないこともあります。ある特定の課題だけに的を絞って、個々の改善が他の課題に悪い影響をを生じることがないように注意しなければなりません。

 

(1) 組織統治

組織統治とは、組織がその目的を追求する上で、決定を下し、実施するときに従うシステムのことです。組織統治は、規定された「構造」と「プロセス」に基づいた正規の統治の仕組みと、その組織の文化・価値と関連して現れる非正規の仕組みとの両方から構成されます。

組織統治は、組織内における意思決定の枠組みですから、あらゆる種類の組織の中核的な機能です。そのシステムは、経営陣によって指揮されます。

組織統治は、組織が自らの決定と活動の与える影響に責任をもち、社会的責任をその組織全体及び自らの関係に統合することを可能にする最も決定的な要素です。

社会的に責任ある行動を目指す組織は、その組織が監督を行い、社会的責任の原則を実践することを可能にするような、組織統治のシステムをもっているべきであるという期待から生じます。

効果的な統治は、意思決定と実施に、社会的責任の原則を組み込むことに基づいています。これらの原則とは、説明責任、透明性、倫理的な行動、ステークホルダーの利害の尊重、法の支配の尊重、国際行動規範の尊重及び人権の尊重です。

 

【意思決定】

意思決定とは、「目標を達成するために、複数の選択肢から最善のものを導きだそうとする行為」を意味します。社会的責任に関する意思決定は、意思決定のロジックが存在しなかったり、事実やデータがないことがあるため、最も不確実な意思決定を含みます。こうした「意思決定の構造」を次の図で表します。

また、意思決定のプロセスは次のようになります。

(2) 人権

人権とは、全ての人に与えられた基本的権利です。人権には、大きく分けて2つの種類があります。

 

 ①市民的・政治的権利に関するもので、自由・生存の権利、法の下の平等、表現の

  自由などの権利が含まれる。

 ②は経済的、社会的、文化的権利に関するもので、労働権、食糧権、健康に対する 

  権利、教育を受ける権利、社会保障を受ける権利などが含まれる。

 

人権法の大半は国家と個人との関係に関連しているが、非国家組織も個人の人権に影響を及ぼす可能性があることから、人権を尊重する責任があるというのが一般的な認識です。

人権は、政府であっても他の機関であってもそれを人々から剥奪することはできないという点で、絶対的なものです。人権は、地位にかかわらず全ての人に適用されるという点で、普遍的なものです。

人権については次の課題があります。

 ①デューディリジェンス

 ②人権に関する危機的状況

 ③加担の回避

 ④苦情解決

 ➄差別および社会的弱者

 ⑥市民的・政治的権利

 ⑦経済的・社会的・文化的権利

 ⑧労働における基本的原則・権利

また、違法な差別の根拠には、人種、皮膚の色、性別、年齢、言語、財産、国籍もしくは出身国、宗教、民族的もしくは社会的出身、カースト、経済的背景、障害、妊娠、先住民族の出自、労働組合への加入、政治的所属、または政治的見解もしくは、その他の見解が含まれます。最近の違法な差別の根拠には、配偶者の有無家族状況、個人的関係、HIV/エイズへの感染の有無などの健康状態も含まれます。

 

(3)労働慣行

組織の労働慣行には、組織内で、組織によってまたは下請労働を含め、その組織に代わって行われる労働に関連する全ての方針及び慣行が含まれます。

労働慣行には、労働者の採用及び昇進、懲戒及び苦情対応制度、労働者の異動及び配置転換、雇用の終了、訓練及び技能開発、健康、安全及び産業衛生、並びに労働条件(とくに労働時間及び報酬)に影響を及ぼすあらゆる方針または慣行が含まれます。

組織には、完全かつ安定した雇用とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を通じた生活水準の改善に貢献が餅められています。

労働条件には、現金その他の形態の報酬、労働時間、休憩醐、細、懲戒及び解雇慣行・母性保護・ならびに安全な飲料水、衛生設備、韻蝕医療サービスの利用などの福利厚生に関わる課題が含まれます。

労働における安全衛生は、労働者の高次な身体的、精神的及び社会的福祉を促進し維持すること、並びに労働条件によって生じる健康被害を防止すること、また、健康に悪影響を及ぼすリスクから労働者を保護することが含まれます。

人材育成には、人間の能力及び職務能力を拡大することによって人々の選択範囲を広め、これによって男女が長く健康的な人生を送り、知識をもち、適切な生活水準を維持することを可能にするためのプロセスを含みます。

(4)環境

組織が行う決定及び活動は、その組織の所在地を問わず常に環境に影響を与えます。

 

それらの影響は、その組織による資源の利用、その組織の活動の実施場所、汚染、廃棄物の発生、ならびにその組織の活動が自然生息地へ及ぼす影響に関連するかもしれません。

 

そのような環境影響を軽減するため、組織は、自らの決定と活動が、経済、社会、健康、環境に与える直接的・間接的な影響を考慮した統合的な手法を導入すべきです。

社会は、天然資源の枯渇、汚染、気候変動、生息地の破壊、種の減少、生態系全体の崩壊、都市部及び地方の人間居住の悪化など、多くの環境問題に直面しています。

 

世界人口及び消費の増加に伴い、そのような変化が人間の安全保障並びに社会の健康及び福祉に対する脅威として拡大しています。

 

生産及び消費に関して持続不可能なボリューム及びパターンを軽減し排除するための選択肢を特定し、一人当たりの資源消費量を確実に持続可能なものとする必要があります。

環境問題は、局地的、地域的及び世界的なレベルで相互に結び付いています。それらに取り組むためには、包括的で、系統的で、かつ全体的な手法が必要となります。

 

環境に関する責任は、人類の存続及び繁栄のための前提条件です。したがって、環境責任は、社会的責任の重要な側面です。

 

環境問題は他の社会的責任に関する中核主題及び課題と密接に結び付いています。

環境教育及び能力開発は、持続可能な社会、及びライフスタイルの発展を推進する上での基礎となります。

環境に関する課題としては以下のものがあります。

 ①汚染の予防

 ②持続可能な資源の利用

 ③気候変動の緩和と気候変動への適応

 ④環境保護、生物多様性

(5)公正な事業慣行

公正な事業慣行は、組織が他の組織と取引を行う上での倫理的な行動に関係する事項です。このような関係には、組織とそのパートナー、供給業者、請負業者、顧客、競合他社、及びその組織がメンバーとして加わっている団体との関係だけでなく、組織と政府機関との関係も含まれる。

公正な事業慣行に関する問題は、汚職防止、公的領域への責任ある関与、公正な競争、社会的に責任ある行動、他の組織との関係、および財産権の尊重の分野で生じます。

組織間に合法的かつ生産的な関係を構築し維持するためには、倫理的に正しく行動することが不可欠です。

 

したがって、倫理的な行動の基準の順守、促進及び推奨は、全ての公正な事業慣行の基礎を成す.汚職防止及び責任ある政治的関与は、法の支配の尊重、倫理的基準の順守、説明責任及び透明性にかかっています。

 

公正な競争及び財産権の尊重は、組織が互いに誠実に、公平に、かつ高潔性をもって取引を行わない限り、不可能です。

公正な事業慣行に関する課題としては以下のものがあります。

 ①汚職防止

 ②責任ある政治的関与

 ③公正な競争

 ④バリューチェーンにおける社会的責任の推進

 ➄財産権の尊重

(6)消費者課題

製品・サービスを顧客に提供する組織は、それらの消費者に対して責任を負います。

組織の責任には、教育、正確な情報の提供、公正で、透明で、かつ有用なマーケティング情報及び契約プロセスの使用、持続可能な消費の促進などが含まれます。

組織の責任には、設計、製造、流通、情報提供、支援サービス、並びに回収手続及びリコール手続を通じ、製品及びサービスの使用による危険性を最小限に抑えることも含まれます。

 

また、個人情報の収集又は処理を行う組織は、係る情報の安全及び消費者のプライバシーを保護する責任を負います。

組織は、製品及びサービスの提供、並びに使用、修理及び廃棄に関する情報提供を通じて、持続可能な消費及び持続可能な発展に貢献する重要な機会を与えられているのです。

消費者に関する課題としては以下のものがあります。

 ①公正なマーケティング、事実に即した偏りのない情報、及び公正な契約慣行

 ②消費者の安全衛生の保護

 ③持続可能な消費

 ④消費者に対するサービス、支援、並びに苦情及び紛争の解決

 ➄消費者データ保護及びプライバシー

 ⑥必要不可欠なサービスへのアクセス

 ⑦教育及び意識向上

(7)コミュニティへの参画及びコミュニティの発展

組織が自らの活動場所であるコミュニティと関係をもつことは、今日広く認められています。

 

こうした関係は、コミュニティの発展への貢献を目的としたコミュニティへの参画を基礎としています。

 

コミュニティへの参画は、単独での参画であっても、公共の利益の向上に向けた連携を通じた参画であっても、市民社会の強化を後押します。

 

コミュニティ及びコミュニティの機関に敬意を払って関与する組織は、民主主義的で市民の立場に立った価値観を映し出しながら、こうした価値観を強化します。

コミュニティに関する課題としては以下のものがあります。

 ①コミュニティへの参画

 ②教育と文化

 ③雇用創出と技能開発

 ④技術開発と技術へのアクセス

 ➄富と所得の創出

 ⑥健康

 ⑦社会的投資

 

7.CSRの実施方法(既存のシステムにCSRを組み込む)

CSRの適用範囲は、組織によって異なり、また、広範囲に及ぶので、CSR全体のマネジメントシステムを作り上げるのは容易ではありません。

そこで、現在、対象となっている課題について、マネジメントシステムを構築・運用していくことが効率的です。

 

このことについて、ISO26000(CSRの手引書)は「組織全体に社会的責任を統合する」と表現して、わかりにくい手引きを作成していますが、分析すると、確固撃破でよいということがわかります。

つまり、既存のシステム、方針、構造、ネットワークを土台として、社会的責任を実践するシステムを構築するのです。その方法を図示すると、次のようになります。

        図 既存のシステムにCSRを組み込む手順

 

8.ISO26000(社会的責任に関する手引き)

 CSRへの取り組みは、「4.コンプライアンス」でわかるように、膨大な作業にな
 ります。これらを計画し、実行し、評価し、改善していくことは、さらに大変な作
 業になります。これらの作業を効率的に実施できる手引きがISO26000です。

 ISO26000は手引規格(ガイダンス規格)であり、ISO9001のような要求事項を示し 

 た認証規格ではありません。企業がCSRの取り組みを進めるときの参考書です。 

 現在のところ、CSRについての包括的な参考書は内容です。ISO26000は、包括的な

 規格ですが、例によってわかりにくく、ISO9001やISO14001以上に読みにくい規格

 ですが、全体的な視点、CSRの具体的な取り組み方法を知るための参考になると思

 います。

意思決定のステップ.png
統合の手順.png
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